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クラウドファンディング製品はなぜ納期通りに届かないのか

クラウドファンディング製品はなぜ納期通りに届かないのか
  1. クラウドファンディングとは?
  2. なぜクラウドファンディングは納期通りに届かないのか
  3. メーカーを名乗るのは実は簡単?
  4. 別業界で経験のある担当者ほど落とし穴にはまる理由
  5. ベンチャー発のガジェットも図式は同じ
  6. 国内クラウドファンディングは逃げに走っている?

    1.クラウドファンディングとは?

    「クラウドファンディング」とは、「群衆(Crowd)」と「資金調達(Funding)」という言葉を組み合わせた造語で、インターネットを通じて不特定多数の人に資金提供を呼びかけ、趣旨に賛同した人から資金を集める方法です。

    資金調達といえば、一般的に金融機関からの借入や関係者・ベンチャーキャピタルによる出資などがあげられます。クラウドファンディングは、そういった資金調達にはない「手軽さ」や「拡散性の高さ」、「テストマーケティングにも使える有用性」といった点が魅力的な新たな資金調達の仕組みとして近年注目されています。

    欧米では、一般的な資金調達の方法として、早くから認知されていたクラウドファンディングですが、日本では2011年、国内最大規模を誇るクラウドファンディングサービス会社「Readyfor」がサービスを開始したのが始まりです。東日本大震災の年にスタートを切ったこともあり、当初は社会貢献性の高い事業に対して、賛同を募るプロジェクトが多くを占めていました。

    現在では、中小企業が市場開拓や新規事業を目的としてクラウドファンディングを活用し、成功を収める例が増えています。不確実性の高い新規事業など、これまではリスクを負って自己資金を投入するか、何とか実績を作って融資を依頼するしかなかったケースでも、クラウドファンディングなら賛同者から資金を集めてスモールスタートを切ることができます。
    クラウドファンディングの登場によって、「世の中に受け入れられるかどうか」というマーケティングを兼ねて、新規事業の可能性を世の中に問うことができるようになったのです。

    2.なぜクラウドファンディングは納期通りに届かないのか

    PCやスマートフォンの周辺機器業界では、海外の製品を買い付けてきて、自社のロゴやパッケージを付け、自社製品として販売するケースが多い。そっくりの製品が複数のメーカーから発売されたり、あるいはかつて別のメーカーが販売して終息に至った製品とそっくりの品が、数年たって別のメーカーから出てきたりすることも珍しくない。

    かつては、それらを「メーカー」と呼んでよいのかどうかという議論も多くみられたが、最近はあまりにも当たり前になりすぎたせいか、ほとんど聞かれなくなってしまった。今や、市場にあふれている多数の製品のうち、デザインや設計の段階から自社で手掛けたオリジナル製品は、ごく限られているのが現状といえる。

    こうした取り売りビジネスは、全く畑違いの事業者が新規ビジネスとして行うケースに加えて、クラウドファンディングで行われるケースも増えつつあるが、納期通りに届かなかったり、また届いても品質面ではボロボロであったりすることも少なくない。

    3.メーカーを名乗るのは実は簡単?

    冒頭に述べたような取り売りのビジネスが成立する背景には、こうしたOEM用の商材を用意している業者が、海外、特に中国には大量に存在しており、日本のメーカー(と呼んでよいのか定かではないが)向けに、出荷体制を整えていることがある。

    つまり、見本市などでこうした業者を見つけて提携すれば、本職のサードパーティーメーカーに限らず、畑違いの事業者であっても、メーカーのようにふるまいつつ、オリジナルの製品を作れてしまう。どう考えても通電モノの製品を作るノウハウがなさそうな大手の生活用品ブランドなどがそうした製品を手掛けているのは、主にこのパターンだ。

     こうしたケースでは、その業界に全く明るくない担当者が一から事業を立ち上げることも多いわけだが、いざやってみるとあまりの簡単さに表示抜けして、あたかも自分の力で製品を作ったように勘違いする担当者も出始める。

    特に一定の販売実績が出るようになると、海外の業者の方から新製品の企画を持ち込んできてくれるため、担当者としてはそれらの選別を行った上で社内の企画会議を通し、その後はスケジュール管理をしておくだけでよい。品質管理や在庫のコントロールを行う業者を間にもう一社挟めば、極端な話、新卒レベルでも一通りのことはできてしまう。

    4.別業界で経験のある担当者ほど落とし穴にはまる理由

    もっとも専業のサードパーティーメーカーであれば、こうした新製品の売り込みから発売に至るまでのサイクルを何度も繰り返しているため、それに伴うトラブルの防ぎ方や、万一それらが発生してしまった場合の対策も熟知しているが、畑違いの事業者であればそうはいかず、ときにとんでもないトラブルをやらかすことも少なくない。

    パターンは幾つかあるのだが、製品の不良や納期の遅延といった、国内の業者を相手にしていても起こるトラブルは、予測可能なだけまだマシである。大きな問題となるのは、要求していた仕様と異なる製品が納品されてきたとか、納品直前になって値上げを要求してくるといった、国内業者だけを相手にしているとまず起こり得ないトラブルだ。

    畑違いの業者がこうしたビジネスを立ち上げる場合、別業界で類似のビジネスを経験した社員が責任者として抜てきされることが多いが、後者のようなとんでもないトラブルは国内業者だけを相手にしていては起こらないだけに、楽観的すぎる予測を立てていて、あとで取り返しがつかなくなる事態に陥ることもしばしばだ。

    また、これと近いケースとして、販売店のプライベートブランドでまれにあるのが、これまで国内の仲介業者を経由して海外製品を仕入れていたのを、手数料を抜かれるのを嫌って海外との直接取引に変更したところ、これまで仲介業者が間に入って行っていた品質管理や在庫コントロールができず、品質も納期もボロボロになるというパターンだ。

    見えないところでどれだけ仲介業者が品質や在庫の調整に苦心していたのかを、そのときになって思い知るわけだが、その時点では既に手遅れだ。いったん取引を停止した仲介業者に頭を下げて再び間に入ってもらうわけにもいかず、あらためて別の仲介業者および取引先を探すところからやり直しにならざるを得ない。そうこうしているうちに担当者が更迭され、プライベートブランド自体がポシャってしまうこともある。

    5.ベンチャー発のガジェットも図式は同じ

    ここまで見てきたのは、ほぼ完成品に近い製品を取り売りで仕入れるケースだが、ベンチャーが全く新規のガジェットを企画し、海外の業者に製造を委託する場合でも、基本的に図式は同じだ。

    中でも、納期の遅延をソフトウェアのバージョンアップで挽回しようとするものの、最終的にコケるパターンは、もはやお約束といっていい。近年はオンラインアップデートにより、ユーザーの手に渡ってからソフト面の改善を行うことが可能になったが、経験が浅い担当者の手に掛かると、この便利な仕組みもトラブルによる納期遅延の特効薬として使われてしまう。

    どういうことかというと、トラブル続出で納期が間に合わず、予約していたユーザーや仕入を予定していた販売店からの苦情は殺到、また営業部などからもクレームの嵐という場合、担当者はお茶を濁すために、後日のファームウェアアップデートを前提に、ひとまず不完全な状態でガジェットを出荷する、という逃げ道に走るわけである。

    ガジェット好きな読者の皆さんは、納期遅延を繰り返しようやく発売に至ったものの使い物にならず、ネットで悪評が飛び交ったベンチャー発のガジェットと聞いて、製品が幾つも思い浮かぶのではないだろうか。こうした製品は、その後ソフトウェアアップデートを繰り返すものの、ようやく最低限のレベルに達した頃には既にダメ製品という評価を確立しており、そのままフェードアウトしていくことがほとんどだ。

    もとを正せばこれは、製造面でのノウハウが少ないために、納期を甘く予測してしまったことが原因だ。これが百戦錬磨のサードパーティーメーカーであれば、甘い納期予測に対して社内でチェックが入り、万一のトラブル発生時のバッファも含めて現実的な納期が提示されるわけだが、新規事業として参入してきたベンチャーにはそうしたノウハウがなく、容易に落とし穴にはまってしまう。

    6.国内クラウドファンディングは逃げに走っている?

    さて、実はここまで見てきたケースは、クラウドファンディングにもそのまま当てはまる。海外のクラウドファンディングもそうだし、それらの取り売りを行っている、国内のクラウドファンディングでも同様だ。

    特に最近は、卸業者なのかメーカーなのかはっきりしない事業者が、国内クラウドファンディングで海外のITガジェットを取り扱うケースが増えているが、上記のようなトラブルに対するノウハウの有無は、これまでの経験によって、かなりの差があるのが実情だ。

    これに加えて、元の製品を作っている海外のメーカー自身が経験が浅いことも多いので、たとえ国内の事業者が納期面をしっかり管理していても、元の事業者が予定通りに発売できないケースも少なくない。つまり元の事業者と、国内の事業者とで、それぞれ品質面や納期面でトラブルが発生する可能性があり、結果としてリスクは高くなりがちというわけだ。

    以上が、クラウドファンディングで製品が納期通りに届かない理由なのだが、とはいえ国内で行われているクラウドファンディングに限れば、最近はそこまで規模の大きい品質面や納期面のトラブルは、ほとんど見聞きしなくなりつつある。

    というのも、最近では前述のようなリスクを避けるため、海外のクラウドファンディングと同時進行させるのではなく、海外できちんと量産体制が整って市場に出回り、製品に問題がないことが見届けられた時点で、国内の業者がクラウドファンディングを行うケースが増えているからだ。よく言えばリスク管理ができているともいえるし、悪く言えば逃げに走った結果でもある。

    少し手間を掛けて探せば海外で普通に売っている製品が、わざわざ国内のクラウドファンディングで「日本上陸!」などと大々的にアピールされて売られるという、おかしな状況が多発しているのは、そうした事情によるものだ。中には米Amazon.comどころか、普通にAmazon.co.jpで販売されている製品が、クラウドファンディングで高値で売られていることもあるほどだ。

    しかしながら国内クラウドファンディングを利用するユーザーは、そうしたことをあまり調べないのか、少なくとも数百人単位ではきちんと出資者を集め、ビジネスが成立しているのが面白い。「国内のクラウドファンディングで売られているITガジェットは本当の意味でのクラウドファンディングではない」とよく指摘されるが、その背景には、こうした事情が存在しているというわけだ。

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